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暗転。2,3秒後にすぐ明転し、士郎、源宗、清美はそれぞれ床に倒れ、
宝くじを手にした春蔵がかろうじて立ち上がっている。
景子は奥にうずくまったままでじっとしている。
春蔵 ・・・勝った・・・。ワシの勝ちだ・・・。・・・はは、ははははははは!
3億円はワシのもんだーーー!!
春蔵、狂ったように笑いながら一目散に部屋から去る。
士郎 ・・・うっ、・・・つつつ。(起きあがる)
源宗 お、生きてたか士郎(起きあがる)
士郎 ああ、なんとかな。
清美 あーっ、痛いっ。(起きあがる)まったく本気で殴るんだから、あのくそ親父。
女性に手加減するってことを知らないのかしらね。
源宗 まあ、あの奥義ってのは嘘くさかったが、あいつが拳帝っていうのはもしかしたら本当だったのかもな。
残念ながら手も足も出なかった。
清美 あーあ。こんなに苦労したのに、結局3億円は訳わかんない親父が横取りか。
なんだったのかしらね。
源宗 まったくだ。やっぱり人間地道にいくしかないのかもな。
清美 あー、なんかもう疲れた。
源宗 こういうときはヤケ酒でもするか。
清美 なによ、じゃあ私もつきあうわ。またいい日本酒隠し持ってるんでしょ。
源宗 そうだな、2人で飲むか。じゃあな、士郎。お前もあんまり落ち込むなよ。
清美 そうよ士郎。・・・景子、あんたも。・・・じゃ、またね。
源宗と清美は割と元気そうに、2人で話しながら部屋を出て行く。
一人で呆然としている士郎のところに景子が寄ってくる。
景子 士郎、大丈夫?
士郎 ・・・ああ。ごめんよ景子。
景子 なに謝ってるのよ。・・・・・・私はね、士郎が無事でいてくれたら、それだけで充分だよ。
士郎 ・・・・・・ごめん。
景子 謝らなくていいって。・・・あ、血が出てるじゃない。ちょっと待ってね。
景子、ポケットからハンカチを出して、士郎の顔についている血をふき取る。
景子 (顔を拭きながら)・・・でもさ士郎。なんでそんなにお金が欲しかったの?
前から気になってたんだ。士郎、なんでそんなに宝くじに夢中になってるのかなって。
3億円、何につかうつもりだったの?
士郎 ・・・・・・店を、・・・持ちたいと思って。
景子 えっ?
士郎 3億円で、レストランをつくりたかったんだ。お前を料理長にしてさ。大きな店を。
それで大繁盛させてさ。・・・・・・そしたら、お前の夢もかなうし、俺も・・・・・・。
俺も、一流レストランのオーナーで、タダのぷー太郎じゃなくなる。
そうなったらさ、・・・・・・俺も景子に見合う男になれると思って。
景子 ・・・・・・そんなこと考えてたんだ。
士郎 でも、結局俺は相変わらず、源宗の言うとおりしがないぷー太郎のままだ。
・・・俺は景子に見合うような男には一生なれないかも知れないな。
景子 そんなことないよ!・・・そんなことない。
たとえ士郎があの時、みんなを押しのけて3億円手に入れたって、私はちっとも嬉しくないよ。
・・・・・・さっきも、・・・言ったじゃない。
士郎 ああ。・・・だからごめん。
景子 ・・・なんか寒いね。
士郎 ああ、扉が壊れてるからだ。
景子 あ、そうか。・・・ちょっと直してくるね。
景子、壊れた扉を直しに部屋を出る。
士郎は、一人で空を仰ぎながら一人つぶやく。
士郎 ・・・俺は、・・・・・・一体、何をやってたんだろう。
そこに景子が新聞を持って、ばたばたと駆け込んで来る。
景子 士郎!!!士郎、士郎士郎!!
士郎 ・・・・・・。
景子 士郎、これ!これ見て、夕刊!!入り口の前のポストに入ってたの、一面に出てるよ!
士郎 ・・・・・・。
景子 ほらこれ!「宝くじ、抽選失敗。やり直し」・・・だって!
士郎 ・・・え?・・・どういうことだ。
景子 ・・・ん、とね。・・・「本年度宝くじの抽選において、1等の番号がA組000001番という異例の数字が
発表されたが、これに対して主催者、ならびに観客からもおかしいとの声があり、やり直しが要求されたため、
調べなおしたところ、回転盤のモーター部に故障が見られたため、抽選のやり直しとなる騒動が起こった。
・・・なお、新しい当選番号は以下の通り」・・・・・・。(新聞に見入る。)
士郎 ・・・・・・。
景子 ・・・・・・そっか。つまりあのあとやっぱりやり直しになったみたい。
・・・考えてみればおかしいもんね、A組000001番なんて。
士郎 じゃあ、なにか?俺達が命がけで奪い合ってたあの宝くじは、結局ただの紙切れか。
景子 ・・・そういうことみたい。
士郎 ・・・はは。今ごろハルさん、銀行で大恥かいてる頃か。・・・・・・ははは。
景子 ・・・士郎?
士郎 ・・・・・・俺は、・・・一体何をやってたんだろうな・・・。
ただの紙切れの為に、命がけで戦って、それだけじゃあき足らず、景子を危険な目に合わせて・・・。
景子 士郎、もういいじゃない。
士郎 ・・・景子、・・・俺は・・・俺はもう・・・。(泣きそうな声)
景子 ・・・士郎。ほら、もうやめて。ね。
・・・そうだ、ほら、部屋ずいぶん散らかっちゃったね。片付けようか。
景子は散らかった部屋を片付けはじめる。
士郎は相変わらず呆然としたままだが、しばらくして景子は例の神棚に気づき、
再び新聞読み始める。
士郎 ・・・景子。何やってるんだ?
景子 何って、ほら。もしかしたらこっちの、士郎が買ったほうの宝くじ、当たってるかもしれないじゃん。
一応、確かめとかないと。
士郎 ・・・・・・。
景子 だから、ちょっと借りるね。(宝くじを棚から取り、新聞と見比べはじめる)
士郎 ・・・・・・景子。
景子 (新聞と宝くじを見たまま)なあに。
士郎 ・・・・・・景子、もういいよ。
景子 (新聞を見たまま)なにいってるの。士郎せっかく遠くまで買いにいったんだから、一応見とかないと・・・。
士郎 ・・・・・・いや、景子。・・・もう俺は・・・。
景子 あーーーーーーーっっ!!!!!!!
士郎 ・・・景子?
景子、慌てて新聞と宝くじを士郎に見せる。
景子 士郎、ほらこれ!B組の018546番・・・って、これこれ!士郎が石川に買いに行ったやつ。
これ、当たってるよ!
士郎 ・・・・・・。
景子 ほら、良く見て!(士郎に宝くじを渡す)間違いないよね。えっと、これ3等だから・・・。
・・・400万円!!すごい!400万だよ!
士郎 ・・・・・・。(じっと宝くじを見る)
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