戻る
松陰、男の面と頭巾を奪い取る。
すると!面の中からは金髪に高い鼻をした明らかに異人とわかる男が現れる。
2人 ああああああー!!
重輔 えええ?!
松陰 ・・・。
重輔 ・・・。
松陰 い・・・い、い・・・
2人 異人だ?!(2人顔を見合わせる)
異人はマントを取り、英語をぺらぺらと話しはじめる。
思わず圧倒され後ずさる2人。
重輔 うわああ、異国の言葉だあ!!
松陰 ・・・。
異人 (英語でまくしたてる)
重輔 そんな馬鹿な、なんで異人さんがこんなところに・・・。
異人 (英語でまくしたてる)
重輔 ど、どうしよう?なんで言ってるんでしょう、先生。
異人 (英語でまくしたてる)
松陰 ・・・ふーむ。なるほどなるほど。
重輔 ・・・先生?
異人 (英語をぺらぺらと話す)
松陰 おーけーおーけー。あいあんだーすたんど。
重輔 せ、先生?!
松陰 なんだ?
重輔 先生、異国の言葉がおわかりになるのですか?
松陰 まあな、伊達に海外へ行こうなどと言っているわけではないぞ。
無事脱出できたときの為に異国語くらいは勉強しておったわ。
重輔 さすが先生。それでこの人はなんて?
松陰 まあ落ち着け。これからじっくり話を聞いてみる。
異人 (英語をはなす)
松陰 おーおー。いえーすいえーす。
重輔 ・・・。
松陰 ・・・重輔、こいつはえらいことがわかったぞ。
重輔 え?何ですか先生。
松陰 どうやら彼は、黒船に乗って来たらしい。
重輔 えええ?!だって黒船の人間だって日本の領土にはあがれないはず・・・。
交渉ごとだって全部船の中で行っているくらいなのに。
異人 (英語を話す)
松陰 なるほど、『自分は一介の乗務員だが、どうしても一目日本の町を見てみたくて
上司の目を盗んでこっそり船から降りてきた』と・・・。
異人 (英語を話す)
松陰 『と、そこへ世にも美しい日本人男性がいるものでついつい話を立ち聞きしてしまった』と。
異人 ・・・。
松陰 『しかし改めて近くで見るとなんと美形で賢そうな若者なのだと改めて感心してしまい・・・』
異人 ソンナコトイッテナイヨ。
重輔 ・・・先生、先生。
松陰 『日本の若者にもこんなに聡明な者がいるのかと』
異人 そんなこと言ってないよ!
重輔 日本語ですよ先生!
異人 だからそんなこと言ってないって言ってんだろ、このスットコドッコイ!
松陰 何ーーーーーーーー?!
重輔 驚きました・・・。何でこんなに流暢に日本語を?
異人 ワタシは前前から日本に興味があり、密かに日本語を勉強していたのです。
重輔 なんと?
異人 それなのにこの男ときたらいい加減な話を次から次へと・・・。
松陰 なんだ、言葉がわかるのなら話は早い。(やたらと偉そうに)
重輔 先生、開き直りが早すぎます。
異人 ええ、まあ最初の方のこっそり黒船を降りてやってきたというのは本当です。
松陰 そうか、やはり黒船の者だったか。
重輔 先生、これはみつかったら重罪ですよ。
異人 そのとおりです。ここでみつかってしまっては幕府の人間もただではすまないでしょうし
黒船の提督にも罪が及びます。何よりこれが原因で日本との交渉に何かあっては
大事とになります。
松陰 うむ、まったくもってそのとおりだ。いわばお前は犯罪者というわけだな。
重輔 (小声で)自分だって似たようなもんのくせに。
異人 そこであなた方にお願いです。どうかこのワタシを見逃してはもらえないでしょうか。
松陰 なるほど。そういうことか。
異人 お願いです。ワタシには国に大事な家族もいます。ここで何かあっては困るのです。
松陰 そうかそうか〜。しかしなー、ここでお前を幕府に差し出せば褒美も出るかもしれんし
そう簡単に見逃すわけにはなぁ。
重輔 先生、なんてことを?
異人 そこをなんとかお願いします。ワタシにできることならなんでもいたしますから・・・。
松陰 んー?なんだってー?
異人 ですからワタシにできることならなんでもしますから。
松陰 よぉし!!交渉成立だ!!
重輔 先生、まさか?!
松陰 この異人に頼んで黒船に乗せてもらおう!
重輔 あああ!やっぱり?!
(間)
松陰 と、いうわけでだな我々をぜひ黒船に乗せてもらいたい。
異人 ううん、しかし・・・ワタシはただの一介の乗務員です。
そんなことを決める権限はワタシにはありませんよ。
次へ