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静かな波の音。

重輔  ・・・先生。


波の音。


重輔  先生。


波の音。


重輔  松陰先生!!!


明転。下田の宿屋。
松陰と重輔2人の姿が見える。
望遠鏡でじっと動かずに海を見つづける松陰。
それに対していらいらと歩き回る重輔。


重輔  いい加減にしてくださいよ先生!!


松陰は振り返らず望遠鏡を覗きつづける。


重輔  下田に来てもう3日、一体いつまでそうやって海をながめているおつもりですか。
松陰  ・・・。
重輔  まったく、先生ときたら突然『下田へ行こう』などと言い出すから何の用事かと思ったら
松陰  ・・・。
重輔  到着するなりただそうやって一日中望遠鏡で海を見ているなんて、一体何を考えてるんですか。
松陰  ・・・。
重輔  海がみたいなら長州にだってあるじゃないですか。
    我々のような下級武士にとって、遊学が許されるなんてどれほど貴重なことか・・・
松陰  ・・・何かが海をやってくる。
重輔  ・・・え?
松陰  何かが海をやってくる!!!


テーマ曲『どんたく』(サディスティック・ミカ・バンド)
急いで駆け出す松陰。
慌ててそれを追う重輔。


舞台は下田の町外れ。松陰と重輔がやってくる。


松陰  いやぁ、それにしても町は大騒ぎだったな。
重輔  当然ですよ。僕も驚きました。遠くから見ても恐ろしい大きさと迫力ですね。
松陰  ああ、あんなものを作り上げる異国とは恐ろしいものよのう。
重輔  きっとあれにかかれば下田の町なんて吹き飛ばされてしまいますね。
松陰  そうだろうそうだろう。
重輔  本当にびっくりしました。まさか、まさかこの目で噂に聞いた黒船を見ることができるなんて。



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